2008年8月23日土曜日

天才と発達障害(加藤一二三とADHD)

将棋の世界に加藤一二三という天才棋士がいる。18歳でA級八段にまで登り、神武以来の天才と言われた男だ。私は最近のプロ将棋の動向はよく知らないが、18段歳A級8段の記録はまだ破られていないと思う。また、60歳過ぎて加藤程活躍している棋士は極めて稀である。加藤のかつてのライバルたちは、殆どが引退したり、引退に近い成績に陥っている。例えば米長は加藤よりも年下なのに実質的引退だ。加藤より大分若い中原誠も、かつての精彩は全くない。ところが加藤は70歳近いのにまだまだ元気で現役なのだ。おそらく、将棋界始まって以来の大老人棋士となるであろう。

加藤は、同時に奇人変人として知られている。
ご飯をかつ丼ばかりを食べるとか、友達が1人もいないクリスチャンだとか、対局中に相手の棋士の背面に回って将棋盤をのぞくとか、あまり良くない噂ばかりである。しかし大きくまとめると、彼の奇癖は次の三つに分類できた。

①常識的に見たら必要もない序盤や中盤の局面で、超長考をしてしまう。(もちろん将棋指しにとっては、客観的に望ましくない習慣である。加藤一二三が今ひとつ成績が振るわなかったのはこれが原因であると言われている)。それでいて、長考の結果持ち時間が途中でなくなり1分将棋になったとき、正確な読みで異様に強くなる。

②しつこく同じ作戦にこだわる。(中原名人に名人戦で挑戦したとき、全部相矢倉で4連敗してしまった事がある)。

③対局中、貧乏ゆすりがひどかったりとか、落ち着きがない行動をする。

様々な棋士たちが加藤の悪口や批判を口にしていた。それはまあ、もっともなことかもしれないと思う。だが、21世紀の現在振り返ってみれば、加藤の奇癖は、 ADHD(注意散漫・多動症候群)にほかならない。貧乏ゆすりが多動性なのは言うまでもないが、とりわけ重要なのが、加藤の時間感覚のなさと超集中力である。

もし加藤が ADHD でなく、適切な時間配分が可能な棋士だったらどうなったのであろうか。もっと簡単に名人になれたのであろうか。或いは、むしろ、凡庸な普通のプロ棋士だったのだろうか。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

その通りだと思います。

ちなみに対局中、
ハチミツを舐めることもあるそうですよ

でもこの方は知能の高さのおかげで、自分の活躍できる場所に出会えて幸せですよね